抄録
特許1件あたりの引用論文等の数,すなわち「サイエンスリンケージ」は,技術に科学が与えている影響を理解するために有効な指標と考えられている。本稿では,これまでほとんど研究されていない日本特許を対象とし,科学技術基本計画において重点分野とされたバイオテクノロジー,ナノテクノロジー,IT,環境の4つの技術分野におけるサイエンスリンケージの計測を行った。その結果,日本特許のサイエンスリンケージは,技術分野によって大きく異なっており,バイオテクノロジーが突出して多く,ナノテクがそれに続き,ITと環境技術は少ないという一定の傾向を持つことが明らかとなった。本研究は,技術的思想の創作過程が,技術分野によって大きく異なることを示唆するものであり,今後の科学技術政策立案等のための定量的かつ実証的な基礎資料たりうるものと考えられる。